金田一少年の事件簿(2022)「金田一少年の殺人」 感想

1994~95年連載で堂本剛版でもドラマ化された長編をリメイク。全14話という金田一少年トップクラスの長編で、堂本剛版では1話で超圧縮されていたが、今回は前後編に分けての映像化となった。

(以下、原作のネタバレ含む感想。)

 

前編

剣持警部の知り合いということになったいつきさんの頼みで作家・橘五柳の誕生パーティへ参加することになった一達。新作の出版権を手に入れるための暗号解読ゲームを解くことになったが、五柳が殺害され一が濡れ衣を着せられてしまう。状況証拠で完全に犯人と決めつけられた一は警察到着前に脱走して真犯人を追うが、行く先々で関係者が次々と殺害されてしまい…。

めちゃくちゃ展開を圧縮+無駄にスプラッタな殺害方法へ変更して暗号の答えまで変えた堂本剛版に比べ、2話分あるおかげで事件の内容自体は原作通りに。ただ、原作は落語家だった関係者の一人がグラビアアイドルのゆきぽよになるという改変も(堂本版でも女性タレントに変更されてたけど)。そして本ドラマ化でも登場しなかった花村姉妹。まああの可愛さ×2はドラマでは再現不可能…。

悲恋湖が放送されていないので、初登場のいつきさんは剣持警部の知り合いということになり、剣持の頼みでみんな(といっても登場人物が一斉整理されたので都築といつきさんのみ)捜査へ協力する展開に。原作+旧ドラマではおじさんだった都築はまさかのA.B.C-Z戸塚くんに。なんでだよ。ジャニーズ展開が強引急に若くなりすぎだろ。

また、長嶋警部の代わりにオリジナルの高林刑事が登場。一を犯人と断定して追いかける役回りになったが、最初から決めつけて一に迫った長嶋警部と違い、警察到着前に一が逃走したので犯人と考えるしかない状況で、淡々と真面目に一を追い詰めていた印象。というか当初は剣持警部の説得も汲み取っていたので、この刑事さんなら正直逃げなかった方がまともに一も捜査できていたのでは…

そんなこんなでひたすら走る道枝くん金田一のアクションっぷりが活かされながら、ゆきぽよが殺害された現場から逃走するために乗ったトラックが検問で暴走、荷台で振り落とされかけていた警官を助ける過程で拳銃をゲットし、疲れ果てて気絶し後編へ続く。いくら長野県から神奈川へ設定変更されて原作の電車トラブルを再現できないからといって、検問を暴走突破するトラックに変更ってそっちの方が逮捕不可避の超展開…

後編

前編は気絶する一の元に誰かが訪れるシーンで終了したが、現れたのは助けに来た佐木だった。朝ドラ撮影の都合で美雪は前編殆ど姿を現さなかったが、ここでも佐木が美雪が心配してるから電話するべきと一へ語り掛けるも、照れた一が拒否。本当に電話することなく、この時点で出番皆無が確定に。

士気を取り戻した一は野中の元へ向かい、暗号の答えが大村→時任→桂→野中=大時計の中と判明。その直後に野中は早速殺されてしまい、後が無い一は剣持にメッセージを預け、捨て身の空砲作戦を決行。

ここが本作最大のポイントで、原作ではポケベルを使った暗号メッセージで明智警視へ空砲を撃たせた名シーンを現代にどうリメイクするのかを期待していたが、なんと現れたのはオレンジジュースによるあぶり出しメッセージ。道端で出会った子供に暗号文を渡しにいかせ、あの金田一が弱音を吐いて自殺をするわけがないと察した剣持があぶり出しに気付くという超アナログ展開に。

 

現 代 リ メ イ ク 関 係 な く ね ?

 

というか、むしろポケベルの暗号よりも難易度高いのでは…。という感じで、拳銃自殺を叫ぶ一に剣持が空砲を撃ち、左胸を撃たれた一が救急車で運ばれるという演技で目論見通りに現場から脱走に成功。これにて高林刑事ら警察ご一行は出番が完全に終了し、五柳邸へ舞い戻った一と剣持はトリックを解き、暗号の場所へ原稿を取りに現れた真犯人の都築さん+関係者達を交えて真相を解明。

原作では娘の臓器を入手するため臓器密輸に手を染め、自分の小説で暴露すると迫ってきた五柳を殺害した都築さん。本作では役者35歳のお兄さんに変更されたため、臓器が必要なのは娘から婚約者へ変更。悪徳医者に唆されて密輸に手を染め、最後は自殺して自分の臓器を移植させる流れも原作通りだったが、移植されたのが大人の婚約者になったことで後味の重さがMAX

手術が終わった後、全ての事情を知らされた婚約者が罪を背負って生きていくと重く語り、都築さんが望んでいるのは幸せに生きることだと諭す一。なんかハッピーエンドみたいに終わったものの、現実的に臓器密輸+5人殺害の凶悪犯を抱えた大人相手にそんな簡単に言えねえって。

最後には美雪が少し登場し、心配して抱き着くもののアワアワして何もできないヘタレ一。ラストシーンでは連絡をくれなかった事に怒る美雪に焦って誤魔化す一という何とも釣れない感じで終了。

 

うーん…まあ事件自体は大筋そのままでリメイクされたものの、まさか美雪がほぼ一切登場しないとは…。あんまり原作と比べるものではないとは思っているものの、事件の日は美雪の誕生日で、一が逃走しながら美雪を案じてバースデーケーキを用意しポケベルでメッセージを伝えるという感動シーンが印象的なエピソードだったので、全部オールカットというのは流石に淡泊な感触に…。むしろ、わざわざ助けに来た佐木の方がヒロインだった。

更にポケベル暗号も現代リメイクというかただ削除したも同然な展開になり、本作最大の肝だったピンチに陥った一を当時のオールスター総出で援護するという熱い展開も構築不可能なので、どうしても肝心な要素を総カットされたようになってしまい、全体的になんとも微妙な感想になってしまった。「金田一少年の殺人」は個人的に一番好きなエピソードの一つだけど、やっぱり事件そのもの以上に登場人物オールスターでの熱い展開へ惹かれていたんだなと気付かされた本ドラマ化だった。

あと、警察ご一行も最初は高林刑事が全面的に捜査を指揮していたのに、空砲事件を最後に犯人判明を待たずにクランクアップとは役者さんも流石に驚いたんじゃないだろうか。その後全権を握ることになり、被疑者を死なせた挙句に臓器を移植させ、空砲事件での一の銃刀法違反を揉み消すことになった剣持警部も仕事しまくり…

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