「MR.CHILDREN 1992-1995」収録楽曲レビュー

国民的ポップバンドミスチル特集。全シングル振り返りは枚数が多すぎるのでどう区切ろうかと悩んでいたら、新作ベスト発売に合わせてベスト4作区切りでやればいいじゃないか!という簡単な答えに気付いた。というわけで1回目はデビュー曲からミリオン連発最初の全盛期の「シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~」まで。あのミスチルがストリングスを使っていない!という衝撃の時期でもある(?)。

01. 君がいた夏 
1stシングル 1992年8月21日発売

1stアルバム『EVERYTHING』からリカットされたデビューシングル。97年に発売されたDEENの名曲「君がいない夏」を5年先取りしたタイトル(違)。「また夏が終わる~♪」のサビは印象的で、1stからポップネスっぷりを確立している。どことなく哀愁漂うレトロな雰囲気で初めて聴いた時サザンっぽいなと思った。…つーか俺の中で大体レトロで哀愁漂うミディアムバラード=サザンみたいな方程式が勝手に成り立ってるんだけども…。コアファンの皆さん許してください。

★★★☆☆


02. 星になれたら
2ndアルバム『KIND OF LOVE』収録 1992年12月1日発売

「抱きしめたい」と同時発売された2ndアルバム収録。初期の名盤と名高いアルバムで、ブレイク後にチャート上位に上り詰めロングヒットして最高13位ながらミリオンヒットを達成した。この90年代特有の売れ方は今振り返ると驚異的。故郷から旅立ち会えなくなる彼女への想いを綴った瑞々しいラブソング。ポップながら切ない。楽曲の風景が見えるのが良い。よく初期の隠れた名曲と呼ばれる一曲。

★★★★☆


03. 抱きしめたい
2ndシングル 1992年12月1日発売

2ndアルバムと同時発売。プロモーション用のシングルでそのままアルバムにも収録された。この曲もブレイク以降初期の名曲と話題になり、ミスチルのラブソングといえば?みたいなアンケートがあれば必ず上位に食い込んでいた。GLAYでいう「ずっと2人で…」みたいなポジションかな。オリコンでは6万枚だがベスト盤のライナーでは70万枚売れたことになっている。その名声にふさわしくイントロから切なさ全開、流れるようなメロディーに乗せて「抱きしめたい~♪」のサビはもう涙腺を揺さぶらされる。至高のラブソング。1stベストの中で一番好きなのはダントツでこの曲である。名曲。

★★★★★


04. Replay
3rdシングル 1993年7月1日発売

ポッキーのCMソングに起用。最高19位と当時の最高位を大幅に更新。ブレイクへのキッカケを見事に掴んだ。そんな大型タイアップなだけあってキャッチーなサビの印象が強い。しかし本当にサビの印象が強烈でそれ以外が薄く、実はそこまで好きな曲ではなく…。サビ必須のCMソングとしては鑑

★★☆☆☆


05. LOVE
3rdアルバム『vesus』収録 1993年9月1日発売

3位を記録した3rdアルバム収録。エフェクト気味なボーカルとレトロな雰囲気がどことなく1stシングルっぽい。ゴロのいいサビで気分が高まる。ポップスとして文句なくスタンダードな仕上がり。オシャレポップスっぽくもあるかな?

★★★☆☆


06. my life
3rdアルバム『vesus』収録

失恋ソング。キーボード中心に装飾音が多少目立つが、ここまでバンドの音がそこまで主張せずに薄味なのはメロディー中心のミスチルにおいてはそれがいいのかもしれない。ほのぼのした雰囲気ながら女々しくて悲しい。因みに歌い出しの「62円」は当時の郵便料金。

★★☆☆☆


07. CROSS ROAD
4thシングル 1993年11月10日発売

ドラマ『同窓会』主題歌としてトップ10入り、一躍ミリオンセラーを達成した大ヒット曲。と共にここからシングル連続ミリオンが始まった。曲を書き上げた時に桜井和寿が「100万枚売れる曲ができた!」と叫んだのはファンの間で有名な逸話。これまでの哀愁さや切なさはあまり無いけど、ぐぐっと聴き手を引きつけるメロディーは圧巻。誰もが歌えるまさにスタンダードナンバー。アレンジも多少の装飾音やストリングスっぽい音が入っているが、それらを上手く組み込みつつ基本はバンドサウンド主体で、全体的に嫌味なくボーカルを前面に押し出す小林武史は天才プロデューサーだった。ちょっと平淡すぎて今一つトップクラス大好きな曲にはなりきれない…という思いもあるけど、まさに100万枚売れるべくして作られた名曲

★★★★★


08. innocent world
5thシングル 1994年6月1日発売

アクエリアスCMソング。ポカリではないので注意。前作以上の大ヒットを記録して94年の年間シングルチャート1位を獲得した。この年のレコ大にまで呼ばれ大賞まで受賞したが、当時メンバーは大晦日PV撮影でオーストラリアまで行っており、会場には代理をよこして大賞なのに楽曲披露はこの曲の演奏映像を流すしかないという伝説を生み出した。ここから今までシングルは連続で1位を獲得している。ブレイクの勢いがそのまま曲に現れており、ZARDの「揺れる想い」を思い出す徹底された職人的爽やかさがたまらない。全シングルの中でもずばぬけて爽やかポップス。しかしその裏腹歌詞は桜井和寿の内面をぶちまけたというダークさもあり、そのアンバランスさが楽曲の持ち味なのかな。サビの歌詞通り「いつの日もこの胸に流れ」そうな不朽の名曲。カラオケでも歌いやすそうに聴こえるが、サビの「またどこかで会えるといいな~♪」のキーが最高に高まってて地味に難易度高

★★★★☆


09. Dance Dance Dance 
4thアルバム『Atomic Heart』収録 1994年9月1日発売

売上343万枚を記録、当時のアルバム歴代売上記録を塗り替えた4thアルバムに収録。ここまでの流れで初のロック調ナンバー。イントロのエレキギターから何か今までと違うミスチルを感じる。実際「everybody goes」へのヒントにはなってそうだけど、ロック調を取り入れつつここではまだそこまで激しくなくポップ寄り。タイトル通りダンサブルでもあり異色の楽曲である。なお、この曲はベストで初めて聴いたが、ミスチルの楽曲が多用された01年の月9ドラマ「アンティーク」でもこの曲が使われていて、そこでも聞き覚えがあった。

★★★☆☆


10. 雨のち晴れ
4thアルバム『Atomic Heart』収録

打ち込みっぽい異色のサウンドが展開する楽曲。混沌とジメジメとしたサウンドで現代社会への疲れを歌ったお疲れソング。ここまでひたすらにポップだったのにパッと聴き何があったのかと思う。最後のサビでは「もういいや もういいや 疲れちまった」と歌っててお疲れモード最高潮。それでもイメージはいつでも雨のち晴れと前向きに生きようとして終わるのももがいていて時代を切り取っている ような気がする。これから20代真ん中~でこの曲に共感する機会は増えるのかも…しれない…。

★★☆☆☆


11. Over
4thアルバム『Atomic Heart』収録

4thアルバムからの2曲がどれも挑戦というか実験的な曲ばかりだったのでどうなるのかと思えばこれは超王道のポップナンバー。哀愁漂う切なポップスさが復活。装飾音+シンプルなバンドサウンドの天才(当時)コバタケっぷりも健在。…と同時に初期っぽい青春真っ盛りな空気を感じる曲はこれで最後…かな?「星になれたら」に続く隠れた名曲枠。

★★★★☆


12. Tomorrow never knows
6thシングル 1994年11月10日発売

ドラマ『若者のすべて』主題歌。完全にフジファブリックしか出てこないタイトルであるが、萩原聖人主演でキムタクの出世作ともなったヒットドラマらしい。最終回、V6(当時結成前)井ノ原がキムタクを刺し殺すという衝撃のラストシーンを特番で観た記憶がある。この曲で276万枚の最大ヒットを記録した。壮大で力強いバラード。ストリングス使ってないのが今と革新的に違うところ。その壮大さを盛り立てる崖の上で絶唱するPVも様になるのはこの曲か伊藤由奈「Precious」ぐらいなもんじゃなかろうか。この大ヒットでミスチルは最初の無敵状態へ。そしてポップスヒットチャートバンドミスチルとしてはここで一つの大きな頂点になって、ここからまた違う場所へと向かっていったように思える。なお、このベストに収録されているのはベースとドラムが打ち込みだったのが生演奏に変わったアルバムバージョン。なのでシングルバージョンはアルバム未収録となっている。シングル版を聴いたことがないがそこまで違いは無いらしい。

★★★★★


13. everybody knows ~秩序のない現代にドロップキック~
7thシングル 1994年12月12日発売

C/W予定だったのがあまりに出来がよくシングルA面に出世したという経緯のあるシングル。「Dance Dance Dance」でも片鱗を見せていたロックサウンドを全面的にぶちかまして炸裂。前作でポップスバンドとしては完成形を見たので新境地に立ってみたのかという振り返ったらそんな印象。新境地すぎんだろう。しかし、ヒット路線から転向したら見捨てられてコケ…というアーティストも多い中、飛ぶ鳥を落とす勢いで退屈なヒットチャートにドロップキックをかましたかの如くミリオンを突破した。眼鏡とサラリーマンスーツに扮した桜井が終いには「皆病んでる」と社会を風刺しまくる様子は強烈。こういう曲がミリオンを売上げたのも驚異的。発売から18年経ったけど、就職したらこの曲はどういう風に映るんだろうな(遠い目)

★★★★☆


14. 【es】 ~Theme of es~
8thシングル 1995年5月10日発売

桑田佳祐とのコラボを挟んでリリース。同名のドキュメンタリー映画の主題歌で、esとは人の意識の奥で働く深層心理のようなものらしい。この年ミスチルはやたらとesを連呼していたよう。ここで大掛かりなストリングスが導入されたが、ここではまだ壮大な楽曲のスケールを引き立てるぐらいに機能している。しかし壮大な割に楽曲自体は暗い。そして結局esがどういう概念なのかはさっぱりなんだけども、「何が起こっても変じゃない そんな時代さ 覚悟はできてる」のサビフレーズは初めて聴いた時から心を掴まされ、21歳になった今では一層心に強く響いている。

★★★☆☆


15. シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~
9thシングル 1995年8月21日発売

1月に起きた阪神淡路大震災のため、このシングルの売上は全額復興へと寄付された。「innocent world」の爽やかさと「everybody goes」のロックさを融合させたような勢いのあるラブソング。しかし恋愛の歌詞はいきなりアダムとイブの時代へと遡ってみたり、「恋なんていわばエゴとエゴのシーソーゲーム」と哲学にふけってみたりと小難しい内容になっている。これがある種思春期っぽいような気も。ここまでで一番ノリに乗っている楽曲。ここでもストリングスが導入されているが、ロックサウンドが目立っているのであまり過剰には気にならない。因みにこの年はMY LITTLE LOVERが大名曲「Hello, again ~昔からある場所~」をリリースした年でもある。ホント…小林武史よかったな…(過去形)

★★★★★

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