TVスペシャル「名探偵コナン 30号殺人事件」感想

TVアニメ放送30周年記念、金曜ロードショー枠で放送されたアニメオリジナル2時間SP。10年ぶりの2時間SP放送。2016年の「エピソード”ONE” 小さくなった名探偵」は原作初回をリメイクしたエピソードだったので、完全新作としては2014年「江戸川コナン失踪事件~史上最悪の2日間~」以来12年ぶりとなる。

各県警の刑事勢の面々に加えてまさかの公安やFBIも登場する全員出動の豪華アニオリ。

あらすじ(公式HPより)

『東都タワー』がデザインされた新一万円札が発行され世間が賑わうなか、コナンと少年探偵団、阿笠博士と蘭と園子は、日本紙幣印刷局の長野工場見学に訪れた。

その頃、警視庁では黒田管理官、目暮、佐藤、高木ら捜査一課、そして風見裕也ら公安部が集められていた。
文書鑑定技官の里見透子が、佐藤と高木が捜査していた殺人事件で見つかった新一万円札をニセ札だと断定し、捜査本部が設置される。
今回のニセ札は日本で30番目に見つかった偽造紙幣であることから、この事件を通称『30号事件』とし、今回のニセ札を『ウルトラ30』と命名した。
新紙幣のニセ札流通という前代未聞の報道が出て世間が混乱するなか、コナンと平次はニセ札が印刷されたとみられる大阪の工場へ向かう――。

事件自体はとても面白かった

新一万円の偽札を巡る国家規模の事件ということで、櫻井武晴脚本による重厚な刑事ドラマとして見応えがあって面白かった。しっかりと連続殺人が起きるし、東京から大阪まで跨り、謎解きも息をつかせず、公安が出張る異様な捜査体制も解き明かしながら、紙幣印刷所を巻き込む国家機密を揺るがす大事件として発展。

近年の映画ではゲストの刑事勢や公安FBIが大活躍するところ、高木佐藤を筆頭に警視庁の面々が硬派にキレッキレで捜査していくのも良かった。結果的に印刷局の人間が偽札犯&殺人犯&被害者で印刷所が爆破までされるというコナン史上に残る国家テロになったのと、序盤で仕切っていた公安が速攻で事情を暴かれていて立場が無かったけど…。

悲哀と狂気の真犯人…のはずが…

真犯人は警備員のおっさんで、実は新紙幣の工芸官を降ろされて憎悪に燃えたというもの。

・20年に1度しかない新紙幣の彫刻を目指して仕事をし続けた
・国家機密で家族にも仕事を明かせず、息子の死にも立ち会えず
・その悔しい想いで息子の名前を彫刻に混ぜる
・これが原因で新紙幣の工芸官から外されてしまい、憎悪を燃やすように
・偽札事件を起こし、犯罪者として裁かれることで自らの技術を後世に残そうとした

というところまでは、やや承認欲求が強い気はあったものの悲哀と狂気に満ちた犯人として魅力的で美しかった。…のだが…。

・共犯者が偽札詐欺を働き、詐欺犯として捕まりたくはないと揉み合いの末、共犯者1を殺害
・殺人犯としても捕まるつもりもないとして、自首しようとした共犯者2をトリックで毒殺
・それでも殺人犯として捕まる気はなく、海外へ高飛びを計画

と、段々と目的に拘り過ぎて仲間割れ崩壊を起こして保身に走ってしまい、同情をチャラにする身勝手さに…。海外高飛びは流石に目的見失って保身に走りすぎというか、ちょっと理想を美化しすぎにも映ったけど、執念ってここまで人を狂わせるってことかよ……。

更には復讐の〆として爆発するインクを使って印刷局の爆破を実現させるが、無関係の人間は巻き込まない配慮をしていたっぽい割に計画が杜撰すぎて印刷所にいる面々が大ピンチに。警備員としてセキュリティを調べ尽くしたのに緊急時にシャッターが閉鎖する防犯システムを切り忘れ、コナンに指摘されたらアワアワ慌てるのみ。もう尺が殆ど無かったのでその後は蘭達の脱走成功で大団円になり、犯人はこの時点でお役御免になってしまった。どうしてこんなことに。

全員…出動…?

名の通り、広域に跨る印刷局での事件+国家機密ということで、警視庁に加えて大阪・京都・長野・群馬・静岡・神奈川県警と公安FBIまで登場。TVスペシャルでここまで揃うのは最初で最後なんじゃないかという派手さにワクワクした…が、案の定か活躍度に大きな差が…。

警視庁、平次、殺人現場の大阪・京都組、コナンと絡みが深い長野組は終始活躍。

しかし、山村警部と横溝兄弟は珍しい登場共演なのにほぼ顔見せ程度に終わってしまい、公安は出番の殆どがオリジナルの捜査官で、目暮警部に事情を暴かれてからはしおらしく背景を明かして協力するしかなくなり前半で見せ場がなくなってしまい、風見もフェードアウト。

そのため、安室さんは最初にポワロで偽札に気付いてバイト抜け出したっきりで、かっこよく着替えて出動の気配を漂わせながらまさかの出番終了。ただバイト突然休んだだけに…。赤井さんはコナンに電話で1度情報共有したのみ。海外へ現金輸送されるのを防ぐためにFBIが動いていたという扱いではあるけど無理やりぶち込んだ感があり、ジョディとキャメルは姿のみ登場。和葉もほぼ事件に絡めず。

と、殆どの人間が事件に深く絡めずフェードアウトに…。

これについては、やっぱり原作本筋に深く関係する登場人物がかなり増えてしまい、原作に影響しないよう動かさないといけない関係上、オールスターを動かすのは難しいんだろうと改めて思ってしまった。山村と長野組は高明の弟(景光=スコッチ)と山村が幼馴染という関係が作られ、平次と和葉は1週後に「茜色の千秋楽」エピソードを控えて告白寸前真っ盛り、FBIと公安は言わずもがな。そうなると、普段のTVアニオリと一緒で自由に動かせるのはコナン&新一、博士、少年探偵団、蘭と園子、初期警視庁組になっちゃうか…。世良や組織は下手に増やすと余計しっちゃかめっちゃかになるし出なくて良かったかも。

それにしてもせっかく池田エライザを起用した警察庁のお姉さんはなんだったん?

小五郎は”眠りの小五郎”モード

小五郎も「眠らされるヘボ探偵」のパブリックイメージが未だ強いが、初期からやる時にはやる優秀さを見せ、近年の原作では(組織関係者が周囲に増えて下手に麻酔銃を使えなくなった関係もあって)眠らずに事件を解決するエピソードも増加。映画でも今回もシリアスな空気感もあってコナン達とは別口で独自に事件を察知し、眠らない活躍を期待したものの…。

老婦人の依頼を受けて詐欺犯を突き止めて大阪まで辿り着く活躍までは見せつつも、その活躍はオールカットされてしまい、合流したコナンや刑事組達には数手先を行かれていてギャグ要員にしかなれず、結局”眠りの小五郎”モードに。

まあ小五郎が活躍するのって基本的に身内の危機が絡む時なので、依頼の報酬に目が眩んだギャグ的な動機ではこんなものかという納得感もあったりはする。ただやっぱりかっこいい小五郎は見たかったな…。

全体的には楽しく「TVアニメオリジナルの2時間SP」だった

…とまあ、他にも4月が舞台というのは思いっきりコナンの時間軸が崩壊しているとか、ラストの脱出劇は空手でシャッター破壊した方が早かったんじゃね?とか、蘭は園子に「財界のコネ」とか言わないんじゃないかとか、細かいところを突っ込んでいたらキリがないのでこれぐらいにして。

劇場版ほど派手に重要レギュラーを動かせない中で、普段見られない面々を集結させながら事件そのものを重厚に描いていたのは良かったし、良くも悪くもTVアニオリの2時間スペシャルではあったものの、原作者が関わらないTVアニメスペシャルとしては30周年記念のお祭り感で面白かった。

もうこういった派手なスペシャルは難しいかもしれないけどまた観たいな~。

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