一年に、一度の 

「よーっし、じゃあ今から買い出しに行くぞー。行くやつ!」
「今日は負けませんわよ…!」
「今日もじゃんけんで負けた人がついていくんですよね!?中佐!」
「宮藤さん…声が大きいわよ…」

今日はシャーリー運転による501隊の買い出し日らしい。じゃんけんで負けた奴が暴走球運転カーに乗り込む、地獄日だ。本来この日はわたしも目を血走って闘いに臨んでいるのだけど…。今日のわたしはちょっと違う。

なんたって。

「ちょっと待った!」

お?

「悪いが今日の買い出し…わたしに行かせてくれないか!」

「えっ…えぇっ!?」
「ちょっ…バルクホルンさん、正気なんですか?!」
「トゥルーデ…本気なの?」
「あたしの運転って…」

いきなりあの暴走車への乗車を名乗り出たのは我が相棒、トゥルーデだった。普段はあんなに「あんなリベリオンの暴走列車になんか乗れるか!」って言ってるのに…どうして。

「その代わり…一緒についていくもう一人もわたしに決めさせてほしい」

「っ…わかったわ、トゥルーデがそこまでの覚悟なら。もう一人は誰?」
「それはな…」

…はは~ん、なるほど。読めたぞ?せっかくの市外への外出日だから、指名で二人で買い物デートしたいんだな?だって、今日はなんたってわたしの

「宮藤!」

…え?

「え…へっ…?わたしが、ですか?」
「ああ、今日は宮藤の力を借りたいんだ」
「…わたしの、ですか?」

…なんで…?

「今日は宮藤じゃないとダメなんだ、頼む!」
「…っ。わかりました。では、本日はバルクホルンさんとわたしでお願いします!」

宮…藤…?

…。

――――。

 

「うりゃー!ズドドドドドドドドドドドドドド」
うりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃーー!!!!

「…やれやれ…」
「少佐…、今日の訓練のハルトマンさん、やけに粗ぶってませんか?」
「ま、仕方ないだろう、買い出しから帰ってきてからもバルクホルン、ずっと宮藤と二人っきりだからな」
「えっ…!でも、今日は…」
「ああ、何せ今日はハルトマンの…」

「誕生日だからな。」

…ふーっ。

―――――。

 

廊下。

結局、宮藤に付きっ切りのトゥルーデとは日の入りまで会えないまま、この今日を過ごしてしまった。なんで。年に一回の誕生日だってのに…。そんなに妹の宮藤が好きかよ。

「…お、ハルトマン!」

…トゥ、トゥルーデ?

「探したぞーハルトマン」
「こっちは別に。宮藤と一緒じゃなかったの?」
「あぁ、さっきまでずっと宮藤と一緒だったぞ」
「…。嬉しそうじゃん」
「そりゃな、宮藤のおかげで最高のものができたからな!」

「今日は宮藤の助けがなければわたしもどうにもできなかったからな…。そのおかげで…」

…っ。

「…何よ今日は宮藤宮藤って!人の気も知らないで!今日はわたしの…!」

「…ほらっ!」

…っ、へ?

 

わたし宛に、トゥルーデから差し出されたらしいものは自分で包装したらしい、小さな小包だった。

「…わたしに?」
「ああ、開けてみろ!」

ガサガサ…。…ん、これ…?

「これ…わたしに?」
「扶桑のお菓子だ。饅頭って言うらしい。ハルトマン、前に食べてみたいって言ってただろ」
「…っ、じゃっ、じゃあ今まで宮藤と一緒にいたのって」
「参ったな。さっきまで宮藤に手伝ってもらって、お前のために作ってたんだ」
「トゥ、トゥルーデ…」

…。

わたし、バカだな。トゥルーデが今日を忘れるわけがない。こんなことにも気付かないなんて。

いつもの鉄の軍人が見せることのない一杯の笑顔で、トゥルーデは言った。

「ハルトマン…誕生日おめでとう。」

 

その一言がずっと欲しくてたまらなくて。今日一日のイライラなんてどうでもよくて吹っ飛ぶくらい、その一言で嬉しくなって、わたしまで笑顔になって。

「…ありがとう、トゥルーデっ。」

―――――――ッ。

「…っ」

精一杯のありがとう。一番祝ってほしかった彼女へ。精一杯の味はベタだけど、とても甘かった。わたしの知ってる、トゥルーデ。

 

「……っ、くぉらっハルトマァン!!」

…えっ?

「こ、こんな廊下などと公衆の面前でこんなハレンチな行為など、カールスラント軍人たるもの!!」

ひっ、ひぃっ。やっぱ誕生日でもトゥルーデはトゥルーデだようっ!

 

 

 

「…ん?」

「な、なんだ?」
「いや…だってさっ」

「それって部屋の中だったらいいってことでしょ?」
「っ!……っ」

 

「…さっ、中に入るぞ、ハルトマン。」

「…っ、うんっ。」

やっぱり、トゥルーデはトゥルーデ。わたしだけが知ってる、最高のトゥルーデ。

 


☆あとがき☆

3年ぶりに百合作家業界に帰ってきました!前回書いたの高校時代ですか…。

その名の通り、我らがエーリカ・ハルトマンさんの誕生日記念SSです。
今回のは実は去年から構想あって、でも書く前に誕生日過ぎてしまって、しかもまだアニメ1期しか見てないので知識粗すぎるかな…と思い時期を逃していたのですが、一応2期も映画も、そこそこ関連本(…アラカルトという名の…) を読んでからの今年、取りかかってみました。粗があったらごめんなさい。

まあ一言で言うとエーゲル可愛いよぶひいいいぃぃ!ってことなんすが、エーリカが期待からふて腐れたり、不機嫌になったり、宮藤に嫉妬して怒ったり、本気でトゥルーデを好きだったり、結局いつものエーリカだったりと超個人的な理想のEがMでTな要素を詰め込んでいます。一方のバルクホルンさんも、宮藤スキーは活かしつつ、エーリカへのプレゼントを考えているとワクワクが止まらない…っていう設定で。少々周りが見えなくなるような気も。

そんな展開上、宮藤が嫌われポジションになってしまったかもしれませんが、彼女もバルクホルンさんの頼みでエーリカの誕生日プレゼントのお手伝いをした功労者です。本当にありがとうございました。(…?)

また次回作を書き上げるのがいつになるのか、すぐなのか、数年後なのかはわかりませんが、忘れ去られたマイペース空間コンテンツとして気楽にやっていきますんでよろしくです。では。

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