名曲語り 第0009回
『Altair 〜キミと出逢えたこと〜』/少年カミカゼ 

2007年7月11日リリース。これまで「キッズ・ウォー」「ドレミソラ」という名作を数々送り出してきたTBS夏の昼ドラ「こどもの事情」主題歌。中学生の主人公と友達同士の恋愛や葛藤の青春がピュアに描かれ、レコード会社をリストラされたお父さん(柳沢信吾)と実は彼をリストラへ追い込んでいた旧友のプロデューサー(デビッド伊東)を巡る大人サイドのドラマもあり、家族や友人同士で色々揉め事が起こりながらも最後は全員希望を掴んで歩いていく…というストーリーが素晴らしく良かった。これまでの歴代の夏の昼ドラに比べたらあんまりヒットしなかったが、当時のゴールデンの連ドラ並に記憶に残っているドラマである。そしてキラキラ瑞々しさに満ちていたこの曲もドラマの爽やかさを十二分に盛り上げていた。これもそこまで目立ってヒットはしなかったものの、少年カミカゼシングル史上最高ヒットを記録した。

 

楽曲自体はミクスチャーポップ。カワイイ女性ボーカル+チャラい男性ラップボーカルという構成はHIGH and MIGHTY COLORのポップ版という印象で、夏の終わりの青春模様のこのピュアさが眩しい。若干ノスタルジーも感じるような。これが高校生の青春だったらちょっと幼すぎるような気がして、文字通りに「secret base 〜君がくれたもの〜」の系譜を継いだ小中学生目線ピュア青春ソング。なかなかこういう幼い視点の曲は無いので貴重だと思う。まあ大体この手の曲に感じる眩しさって、個人的にはそういう経験をできなかった自分が思い描く儚い幻想なんだけどね。曲に理想の人生を映し込んでいるような。そういう意味でもこの曲が持つ輝きは非常に眩しい。この枠亡き現在、こういう曲を歌っている人らがいれば是非教えてください。

 

と、こんな若き日々の瑞々しく眩しいところを切り取った名作だった…のだが、ドラマは続編に向けた伏線や展開を静かに張りながらも結局作られず、そもそも半年後には枠そのものが終了撤廃されてしまう。少年カミカゼは解散(2012年復活)。主演を務めていた当時中学生の橋本甜歌ちゃんは数年後にてんちむという姿にカオスエクシーズチェンジ突如引退(現実逃避)。少年カミカゼも去年ライブに行ってみたらかなりゴリゴリのハード系な激しいノリの現場でこの曲のイメージから大きく変わってしまった。あの頃の眩しさを描いていたと同時に、その頃から今は何もかも変わってしまったと感じずにはいられない。毎年夏の終わりは去りゆく日々の象徴としてこの曲が頭に鳴り響くのである…(何か違うぞ)

 

★★★★☆(ぴゅあぴゅあはーとすぎる)
曲★★★★★(こういう可愛く切ない曲をもっと聴いてみたい)
ノスタルジー度 ★★★★★(体験しえなかった理想の「あの頃」の幻想をね)
あの頃懐古度 ★★★★☆(執筆当時6年前の曲って、そろそろ曲単体でもノスタルジーになってきた)
幻想破壊度 ★★★★★(…ってそれはてんちむの事である)

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