名曲語り 第0007回
『それでも 好きだよ』/指原莉乃

AKB48メンバーとして09年デビューしたさしここと指原莉乃。ハロヲタ(ハロプロファンの事)キャラとして?人気を徐々に得た彼女はAKBのブレイク後にテレビでも内気であまり喋らないネガティブ&ヘタレキャラとして単体でも大ブレイク。2011年ユニットNot yetメンバーとしてもデビューし、2012年4月にAKBメンバー史上5人目の本格ソロ歌手デビューを果たした。AKB48公式ライバルとして登場した乃木坂46とリリース対決にもなり、初登場2位のヒット。

 

最初音楽番組で初めて披露された時ビビッと俺の中に何かが走った。アイドルファンを公言する指原によるもしかしてハロプロの大名曲「ロマンティック 浮かれモード」(藤本美貴)以来かもしれない超アイドルソングっぷりな曲調(歌が下手なのもそれがハマってていい)、とにかくアイドルな衣装と振り、「いいって言う人だって?」「いるー!!」といった掛け合い等、とにかく凝って完成されまくったアイドルソングらしさに一発で惹かれてしまった。最初の一発でシングル購入を決意

 

歌詞もヘタレキャラ「さしこ」の真骨頂と言える恋愛ヘタレっぷりな世界観をそのまま忠実に再現。更にPVではアイドルに憧れる地味な学生指原という設定までいかにも「さしこ」っぽかった。まさに指原の指原のために作られたTHE 指原な曲。と思った。思っていた

 

…そう、あの時までは。

 

このリリースの数ヶ月後、総選挙でも4位の大躍進を果たした直後に週刊文春でデビュー当時のファンとの恋愛が暴露されてしまう。AKBの冠番組でも異例の秋元康との対談弁論タイムが設けられたが、真実とも嘘ともわからないどうにもぼかされた本人の弁論でかわされて限りなく真っ黒なイメージになってしまい、とにかく本人が真相を語らないので真実は闇の中(冠TV番組「火曜曲」でのドッキリ企画も似たような流れだった)。どうにもわからないまま、かくして指原はHKT48への移籍が決まった。

あまりにもネタすぎる弁論で過去の恋愛については限りなくクロになってしまった指原。けっこう過激なカットまで写真に掲載されていたらしく「さしこ」の恋愛ヘタレキャラ完全崩壊。俺の左手で…その幻想をぶち殺す!とばりにショッキングな出来事になってしまった。その騒動の後で聴くと「さしこ」全開な「唇つんと付きだしたら架空のキスもできるよ♪」とか明らかに本人の性格とは真逆そうな歌詞連発がもうネタソングとしか思えなくなってしま…。アイドルノリも虚像全開。かくして最高のアイドルソングだと思っていた曲は発売数ヶ月で完全にネタソングと化してしまった。

 

…しかし、元々歌詞のさしこらしさに気付いたのはけっこう後だったし、元よりアイドルバリバリな曲調にビビッと来てのマイブレイクだったのでそれについては「幻想だ!」とかは実はあまり気になってない。アイドルソングとしては名曲。本人の背景を考えたら最高のネタソングだけど、そもそもアイドルって「偶像」って意味じゃないか。そう考えるとある意味究極のアイドルソングじゃね?もうこれはヘタレアイドル「さしこ」のキャラソンとして聴くのが一番いいんじゃないか。

 

しかし、表面的にはHKTで活動しつつAKBの選抜にも相変わらず選ばれてて変わらない活動どころか、この一連の流れで逆に脚光を浴びたり、27時間テレビでも「一人残念ライブ」としてソロで「会いたかった」を歌っているとAKB48メンバーがサプライズで総乱入し、終いには前田敦子らを差し置いて指原がセンターでAKBヒットメドレーが披露されたという茶番が放送されるなど、むしろ前より活躍してるんじゃないかというくらい騒動をモノにしてしまった。これは指原本人より秋本康の戦略の凄さだろうけど。もうこれからもヘタレキャラとしてやっていくのなら勿体ない。「ギンガムチェック」のPVのゾンビ役の如く死んでも蘇るような図太いキャラでやっていった方が天性だしハマるんじゃなかろうか。

 

★★★★☆ (ここまで「さしこ」を再現したら逆に最強のネタに。 「いるー!」の下りは純粋に好き)
★★★★☆ (とにかくキャッチーで覚えやすい)
アレンジ★★★★★ (徹底された最高のアイドルサウンドで楽曲を彩った)
さしこ度★★★★★「さしこ」という完璧なキャラクター)
真っ黒度★★★★★(早急にキャラクター路線変更を希望します)

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