名曲語り 第0003回
『こちら葛飾区亀有公園前派出所』/両さん

略して「こち亀」が実写ドラマ化されたのが2009年。この作品といえば96年〜04年に放送されていたアニメ版が超有名であり、アニメ版の声優をやって舞台版でも役を演じたラサール石井が実写ドラマでも両さんをやるんだろうなと誰もが思っていたが、発表されると両さん役はまさかの香取慎吾だった。

「香取はねぇよ…」という総ツッコミの空気の中、いや新しい両さん像を求めていくぞ!とスタッフは張り切っていたのか原作からキャラを大幅にアレンジ。というか元のやかましいコミカルな方面をデフォルメしまくっててやたらただのやかましいおっさんになってしまったが…。「なんでラサールじゃねぇんだよ!」という視聴者/ファンの問いに原作者やラサール本人が「元々は実写もラサールでお願いしたけど大人の事情で香取になった」的なと元も子もない経緯を暴露してしまい、余計に反感を買ってしまうことになってしまった(表向きにはラサールは年齢を考え辞退、両津父の銀次役で出演した)。そんな流れでこれまで慎吾ママ、ハットリくんと数々のキャラを演じてきた香取もこればかりは滑ってしまったが、これまでと同じくキャラ名義で主題歌をリリースしたのが今作である。

 

作曲:小西康陽による慎吾ママと同じタッグ。「慎吾ママよもう一度!」と意識したのかめちゃくちゃヒット性に溢れた賑やかポップソングに。歌詞もドラマこち亀そのままの歌詞を用意。しかしいきなりタイトル名から始まるのはいいものの、「こんなに長い名前でも大抵みんな知ってます ニッポン人なら誰でもわかる」と初っ端から作品人気に自惚れ、その次にはタイトルなげーよという流れで「こち亀でいいじゃん(いいじゃん)」短くてもいいじゃん(いいじゃん)とネタに走り、再び「国民的に愛されてます」自惚れPart2。その後もこち亀讃歌な歌詞が続き最後は「香取慎吾が演じています」と自らの役をアピールする最強の身内ネタを披露。物凄くツッコミどころ満載の歌詞であるが…しかし曲はさすが小西節といったところで、一度聴いたら耳から離れず「こち亀でいいじゃん(いいじゃん)」が残響。気付けばここ最近一部でネットスラングと化すほど浸透していたという驚異の中毒性っぷり。曲の中毒性と歌詞のネタっぷりが絶妙に絡み合い、あの頃この曲を耳にしてツッコんでいた者は大抵みんな覚えてるという奇跡のネタソングに。

 

というわけで崩壊しまくりのネタソングで叩かれまくり、一桁台の低視聴率を爆走したのだが、どういうわけかオリコンでは3位を記録。紅白にまで出演して香取両さんパワーを振りまきまくった。そして既に決まっていたのか翌年には2011年映画化が決定。再び音楽番組で両さんをアピールしまくるものの「誰が見に行くんだよ?」という国民の疑問の中見事に大コケ。これにて香取が両さんしまくるのは終了となった。

 

ここ最近では某巨大掲示板のなんJスレネタの流れで香取両津を「ほげええええええええぇ!」と叫んでいた事から「捕鯨」と呼んだり、適当に返事する時に「〜でいいじゃん(いいじゃん)」と返すという流れが流行り始めた。やはり同年代前後の記憶には深く刻まれていたらしい。殆ど誰も見ていなかったのにそのフレーズ等は未だに覚えている、奇跡のネタ男であった。

詞 ★★★★☆(ある意味★5)
曲 ★★★★☆(さすが小西節)
ネタ度 ★★★★★(3年経っても忘れられない)
歌詞凡庸性 ★★★★☆((いいじゃん)なんかハマる)
結局香取両津どうよ ★★★★☆(少ししか本編は見てないがこれだけ覚えてるのである意味大成功だと思う)

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