「MR.CHILDREN 1996-2000」収録楽曲レビュー

94年「Tomorrow never knows」がダブルミリオンを突破して最盛期を極めたMr.Children。96年の「名もなき詩」でも2度目のダブルミリオンを果たしてからはハードで難解な方向へシフトしていき、アルバムでもどんよりとした世界観を提示して(らしい)一時売上がダウンし始めた。CDバブル崩壊を手前にミリオンを切るようになり、GLAYラルクの台頭も相まって「ミスチルやばくね?」ムードが最高潮に達していた。ミスチルに低迷期があるとすれば間違いなくここだろう。が、そんなこの時期はミスチルが最も、そしてシングルではほぼ唯一ロックバンドしていた期間であり、この方向性を支持する人も多い。個人的にも1992-1995よりこの時期の方が好きだったり。

因みに、この2ndベストは全シングル収録ではなく12thシングル「マシンガンをぶっ放せ」17thシングル「I'LL BE」が未収録となっている。共にシングルカットで「マシンガンをぶっ放せ」はアルバムの流れでアウトロにヘリの音が重なってるぐらいであるが(シングルは100円で今年入手)、「I'LL BE」は元々大作バラードだった曲をアップテンポに変更したので全く別の曲になっている。これは完全アルバム未収録なので貴重。しかしそこまでレアなわけではなく、Amazonで新品価格で購入できる。

01. 名もなき詩
10thシングル 1996年2月5日発売

月9ドラマ『ピュア』主題歌。初動120万枚を売り上げて当時の歴代初動売上記録を大幅更新。2011年にAKB48に続々抜かれるまでは歴代1位だった。そのため、AKB48が歴代1位を更新した時は「あれは握手券/総選挙効果だ!1種のミスチルには敵わない!」と15年ぶりに引き合いに出されたりもしたが…このミスチルにせよ2日早く発売されたのが9日分丸々集計されての120万だったので結局のところどっちもどっちだろう。2度目の200万枚突破&年間1位。ミスチルの超代表曲といえば「innocent world」か「Tomorrow never knows」とこの曲か。剥き出しのバンドサウンドでサビは高らかに歌い上げるかっこよく気持ちいい軽快ロックソング。サビの早口も歌い切れれば気持ちよく、ミスチルの中では一番カラオケで歌う曲だ。自分探し系の歌詞も励まされた。文句なし。個人的勝手にミスチルトップ楽曲候補。

★★★★★


02. 花 -Memento Mori-
11thシングル 1996年4月10日発売

Memento Moriとは「死を想え」という意味。ややアコースティック調な印象で、暗い空気を漂わせながらも「負けないように枯れないように 笑って咲く花になろう」というサビは地に足がついた力強さがあって響く。ただ同じ暗い励まし系バラードで「【es】 ~Theme of es~」と区別がつかなかった時期も…。しかしこんなに暗い曲もミリオンってすげぇな。

★★★★☆


03. Mirror
5thアルバム『深海』収録曲 1996年6月24日発売

何だかまったりソング。シングルがドカドカミリオンを突破して大成功を納める中、このミスチル史で語られることが多いアルバム『深海』はかなりどっぷりと沈んでいてダークな空気だったらしい。ラブソングではあるけど全体的にどことなく淋しい感じが。3分足らずということでかなり短い。

★★☆☆☆


04. Everything (It's you)
13thシングル 1997年2月5日発売

ドラマ『恋のバカンス』主題歌。ベスト盤のライナーでは「ハードロックをやってみた」と書かれていたけどそこまででもないような…でも、ポップバンドミスチルからすると大きくロックソングかも。重みのあるバンドサウンドと「ステ~イ♪」の強烈なサビで聴かせるラブバラード。あまりバンドを主張しないミスチルにおいて衝撃のギターソロまで飛び出している。しかし何故か弾いてるのは田原さんではなく桜井さんという…。前作に続いてレンタルして、ミスチルいいな!と思い始めていたらその矢先にアルバムを出して活動休止してしまった。

★★★★☆


05. ALIVE
6thアルバム『BOLERO』収録 1997年3月5日発売

『Atomic Heart』に続いて300万枚を突破。現在でも『深海』に次いで最高傑作とも呼ばれるアルバムに収録。その『深海』に続いて混沌としていたようで、生きる意味を模索したこの曲は果て無く暗い。「さぁ行こう 報いはなくとも救いはなくとも荒れ果てたこの道を いつかポッカリ答えが出るかも」ともう行く先は無いけど何とか気を持って進んでいこうぜと鼓舞する歌詞は鬱状態の時に聴いたらたまらなくなるかもしれない…。レミオロメン「アイランド」に近い…か?このアルバムを持ってこのままミスチルは活動休止

★★★★☆


06. ニシエヒガシエ
14thシングル 1998年2月11日発売

ドラマ『きらきらひかる』主題歌。活動休止中にリリースされたもので本人稼働は一切無し。路線も大きく違いPV出演も偽物でまるで覆面バンドだった。打ち込みの激しいサウンドで叫び倒し気味に歌われる異色のロックナンバー。完全に別物のバンドと化していたが、曲そのものはかなりキャッチーで覚えやすく、そこそこ高音が行けるならカラオケでも歌いやすいインパクトのある一曲。しかしかなり暴力的ともいえる一曲で、ミスチルファンにとっては待望の新作と共にショックだったらしく、ミリオンどころか60万枚まで失速。そしてこの休止中にGLAYとラルクが国民的人気を集めてLUNA SEAも復活。気が付けばミスチルNo.1の時代は終わっていた。

★★★☆☆


07. 光の射す方へ
16thシングル 1999年1月13日発売

アルバムの流れを意識したのか何故か「終わりなき旅」と順序が逆。というわけで活動再開後第2作。一見勢いを増した爽快ロックな曲であるが、2番が終わった途端にリミックス気味になり、いきなりボーカルがエフェクトで奥に引っ込んだり、左右に分かれたりとやりたい放題と化す超マニアックロックソング。殆どサビしか聴いてなかったのでこの濃さに驚いた。まさかミスチルがこんな冒険をやらかしていたとは…。とはいえ、世間的には不評だったようでミリオンの前作(次曲)から一転、初動32万→45万という90年代には驚異の一転究極初動コースを辿った。

★★★☆☆


08. 終わりなき旅
15thシングル 1998年10月21日発売

ドラマ『殴る女』主題歌。1年半を経て本格活動再開。復活に相応しい直球応援ロックバラード。1年前の「ALIVE」では鬱全開の救いの無い必死な前向きさだったけど、その迷いはここには無い。とにかく励まされて曲の力強さで背中を押してくれる応援ソングになっている。「いい事ばかりではないさ でも次の扉をノックしよう」「高ければ高い壁の方が登ったほど気持ちいもんな」応援ソング史上に刻まれる名フレーズ。曲調もかなり重たいながら壮大。そして今や定番お家芸となっている小林武史のストリングスが奇跡的に重たいバンドサウンド×壮大なメロディーと絶妙に絡み合って楽曲を盛り立てている。初めて聴いたリアルタイムの記憶はさすがに薄いが中学時代、大学受験、そして今と幾度となく励まされた。チャート的にはミリオンを達成(これが最後のミリオンに…)するも直後にSPEEDが「ALL MY TRUE LOVE」でそれを飛び越す勢いで大ヒットしてやはりミスチルNo.1の時代は…という流れだったらしいが、そんな事は関係なくヒット歌詞もメロもアレンジも思い入れもどれを取ってもこの曲が不動の最高傑作

★★★★★+1


09. ラララ
7thアルバム『DISCOVERY』収録 1999年2月3日発売

バンドサウンドで比較的他の装飾音が鳴っていない曲。これまた模索系で「終わりなき旅」の後もまだ吹っ切れきれてない様子が窺える。このまま2年ぶりにリリースされた7thアルバムは休止期間の間の時代の流れか、シングルがマニアック路線を連発しすぎたからか、桜井和寿の不倫が騒動になったからか売上はほぼ半減していた(それでも181万枚)。

★★☆☆☆


10. つよがり
9thアルバム『Q』収録 2000年9月27日発売

これも次の2シングルと順序入れ替えで9thアルバム収録曲。この間にリリースされた99年9月のライブアルバム『1/42』が公式では8thアルバム扱いされたためそれだけは飛ばされている。曲調は重たいながらも力強く優しさもあるラブバラード。しかしライトリスナーへの意識で「ミスチルっぽいものを!」と考えてかアルバム曲からはやたらバラードが多い気がする。サウンドは再びストリングス。しかしこれは完全にバンドサウンドを掻き消す方向に向かっており、ここから現在に繋がる序章的なものも…。

★★★☆☆


11. 口笛
18thシングル 2000年1月13日発売

シングルカット「I'LL BE」を挟んで年明けリリース。重たい曲調が続いていた中で久々のポップラブソング路線回帰。バンドサウンドで優しく聴かせるまさに初期「抱きしめたい」プレイバック路線。聴いた瞬間これはあああああああああ!!と直感したけど、もうこの頃には一時CDレンタルしなくなっていたような…。なのでしっかり聴いてこれはああ(以下略)するのに6年もかかった…。路線回帰で売上を大幅回復させるも72万枚(年間25位)、そして直後にモーニング娘。(年間7位)とサザン(年間1位)がミリオン級で激突してサザン「TSUNAMI」がJ-POP最大ヒット まで飛ばしてしまったので完全に影に霞んでしまった。「終わりなき旅」に続いて運が無さすぎだった。

★★★★☆


12. NOT FOUND
19thシングル 2000年8月9日発売

ドラマ『バス・ストップ』主題歌。2度目の月9。確かこのドラマは当時観ていて、冴えないサラリーマンバス運転手のウンナン内村とデキる女性な飯島直子というテンプレラブストーリーでやたらテンション高くフレーズを決めたり言動を起こしていた…ような記憶が…。今思うとこれが去りゆくトレンディ世代というものだったのか…。そんな王道月9の主題歌だけあって気合いも充分。叫び倒すように高揚していくサビが熱唱すると気持ちいいロックバラードで、ストリングスも少々派手ながら盛り上げ役に機能している。桜井和寿に「最高傑作」とまで言わしめたが、世間はそうは思わずに売上はダウン。続くアルバムは浜崎あゆみに大敗して2位、遂にミリオン割れしてしまい落ち目ムードさえ漂う事になってしまった。

★★★★☆


13. Hallelujah
9thシングル『Q』収録曲

最後のハレルヤ連呼が印象的。「終わりなき旅」だけが果てしない名曲だったもののすっかり煮え切らない感じで2000年までを辿っていったが、何とか希望を見出して前向いて行こうぜと歌ってこのベスト盤は終了する。確かに前に進んでいく感じがする曲調とハレルヤ連呼しながらフェードアウトしていくのがラストに置かれているからか特に印象的。これが色々吹っ切れる次回作への伏線だったんだとするなら…。…ミスチルすげぇ…。

★★★☆☆

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