KAT-TUN 6人時代シングルレビュー

ドラマ「ごくせん2」で亀梨と赤西が注目されてブレイクしたのが05年。元々KinKi Kidsの専属バックダンサーとして結成されたKAT-TUNはジャニーズファンの間では有名だったものの、CDデビューは果たしておらず一般知名度は皆無だった。そこからドラマ出演で人気が大爆発→待望のCDデビューというジャニーズグループの中でも特異な売れ方をした。不良、ロックでカッコイイというイメージ像は他のジャニーズにはおらず、ロックサウンドに中丸のボイスパーカッション、"JOKER"田中聖氏の攻撃的なラップが絡む楽曲も突出した個性を放っており、男性もとっつける魅力があったのでNEWS以降のジャニーズでは飛び抜けてヒットしたのもわかるというか。この時期からどんどんと無くなっていったサクラップとは対照的にJOKERラップは毎回ほぼ必ずあったのが眩しかった。しかしこの人気はデビュー時が最高地点で…。

CDデビュー10周年、まずはデビュー前から赤西が抜けるまでの6人時代をシングルレビューで振り返る。

 

1st Real Face
06年3月22日
待望のCDデビュー。スガシカオが作詞、B'z松本が作曲という破格の豪華さで大々的にデビューを果たした。亀梨が先にCD出したといえど当時のKAT-TUNデビューの待望度はハンパ無く、デビューシングルから3週連続1位、ミリオン突破を果たしてO社年間1位をかました。今振り返っても勢いは本物だった。

そんな勢いで大ヒットしたデビュー曲は当時のKAT-TUNのイメージをそのままパッケージ化した打ち込みロックナンバー。TAK MATSUMOTOの提供はダテじゃなく、「ギリギリでいつも生きていたいから♪」のサビはキャッチーでかっこよく決まりまくっていて絶品。間奏のフレーズも耳に残りまくってTAKっぽい。亀梨&赤西のツインボーカルメイン、そこに全面的に中丸のボイパとJOKERのラップが絡む構成は6人時代KAT-TUNの個性を見事に掴んでいて、デビュー曲にふさわしい決定版な1曲。それだけに赤西がいなくなるとパンチが薄くなり、更にJOKERまで脱退してからはTVで歌われるこの曲はらっきょと肉を抜いたカレー状態で…。それだけ絶妙にメンバーが絡み合っていた。10年経った今でも最大ヒット&ミリオンの名に恥じない勢いを持った名曲。ただ、それと同時に1stにして最高地点で…。

同日発売の1stアルバムにはアレンジが違う「Real Face#1」が収録され、TAK MATSUMOTOと徳永暁人によるギターロックアレンジに。原曲ほどのキャッチーさは無いけども、爽やかさ&ワイルドさは増強されててこれはこれでかっこいい。因みにアルバムにこちらが収録されたので実は長らくシングルバージョンはアルバム未収録だったが、ベスト発売でようやく手に入りやすくなった。
★★★★★(6人時代のみ)


2nd SIGNAL
06年7月19日
ドコモのCMソング。大量OAされていたので06年の夏といえばチキチキアーとかワッツゴーイオンとか言ってた記憶がある。それぐらいのインパクトは放っていた。ミリオンデビュー曲の次回作にして売れ線を捨て去ったダンス曲だったのに怖いもの知らずというか、当時のKAT-TUNの勢い恐るべしというか。亀梨くんは月9に出演(しかし大コケ)、この夏は24時間テレビのパーソナリティと全盛期を極めていた。JOKERラップも軽やかに絡んでいくしいつ聴いても爽快で心地いい1曲。O社でも2作連続の初動45万枚越え、O社年間5位を記録した。
★★★☆☆


3rd 僕らの街で
06年12月7日
亀梨主演のドラマ「たったひとつの恋」主題歌。北川悦吏子脚本のどちらかというと日テレ土9というよりも月9っぽいラブストーリーで、バーター友人役で田中聖も出演。ヒロインに綾瀬はるか、戸田恵梨香というキャストも良かったが視聴率は失速。月9に続いて社会人ラブストーリーやるには亀梨くん若すぎたのか、全体的にキザな世界観でかっこつけすぎて滑ってたのか…。主題歌のこの曲は小田和正が提供したラブバラードでハマっていた。いきなり「留学」と言って赤西がいなくなったのと、小田和正のメロディーにラップを入れる余地は無かったのか、3枚目にして赤西もJOKERもいない凡作になった感はあるけど…。とはいえ、曲自体は流石の小田和正による渾身のバラードで、他のジャニーズシングルには無い乾いた感じがカッコいいバラードである。年末番組では赤西いなくなって「Real Face」が歌えなくなり、新曲のこっちを歌う一幕がよく見られた。
★★★★☆


4th 喜びの歌
07年6月6日
田中主演のドラマ「特急田中3号」主題歌。遂に亀梨くん以外が連ドラ主演したが視聴率は一桁街道を爆走し、結果的に唯一の田中聖主演ドラマに…。ドラマ初期では5人バージョンで流れており、赤西が早速復帰したので6人で再録されてリリースされた。これまでとは変わってロックテイストではあるもののかなり陽気でポップな感触。田中氏の「止まらねぇ!!」絶叫はド根性一発だったし、青春っぽい感じでドラマに合わせてたんだろうか。「愛してる~愛してる~♪」の歌い出しはキャッチーで一発で耳に残り、間奏のJOKERラップではこれまでのシングルタイトルを盛り込んでいたりとちょいちょい小ネタがあって面白い。アクセントとしてクセになる爽やかな曲で良かった…が、あんまりパッと印象に残ってないのはこの年は嵐の「Love so sweet」があったからかなぁ…。ノリが軽すぎて前年までの圧倒的王者感無いし。元々赤西がいないことを前提に作ったからなのか?
★★★☆☆


5th Keep the faith
07年11月21日
赤西主演のドラマ「有閑倶楽部」主題歌。ヒムロック提供のロックナンバー。そしてスガシカオ、TAK MATSUMOTO、小田和正に続く大物提供路線はこれにて終了となった。デビュー曲以来のロック路線、主役の赤西がフィーチャーされたワイルドなロックナンバー。やっとロックなKAT-TUNが帰ってきた!と歓喜した。大サビ前に「Sweety...」と呟いてたのはキムタクを明らかに意識していたが、あれが寒くならずにしっかり形になるのは流石ジャニーズというか赤西オーラというか。かっこよさが良かったのかドラマが好評だったからか、O社では下がりっぱなしだった売上が初めて上昇。O社年間チャートでは5位6位で4位に嵐がいたものの、このかっこよさと勢いはまだ無敵だった。しかし「Real Face」同様、赤西のかっこよさで曲を引っ張っていた印象なので5人体制になってからはどう歌われていたのか…。今のクールなKAT-TUNにこの曲はあんまり合ってなさそうだし。
★★★★☆


6th LIPS
08年2月6日
亀梨主演のドラマ「1ポンドの福音」主題歌。終始高音で駆け抜けるシングル史上最高に激しいハードロックナンバー。歌番組では静かな歌い出しから絶叫でスタートしていたのでその印象がめちゃくちゃ強烈。そのバージョンもCD化してほしかった。普通にかっこよくて好きな曲だったが、さすがにこれまでの無敵感は無くて勢い一発になっていた印象が…。こんなに激しく駆け抜けるのにJOKERラップは2行しかないのも微妙だったし。07年までの無敵モードから一段オーラが薄くなってあれっ?と思った記憶が。
★★★☆☆


7th DON'T U EVER STOP
08年5月14日
久々にノンタイアップ。それに加えて「SIGNAL」以上に売れ線を捨て去ったダンスロック。今聴くとこれがめちゃくちゃダーク&ワイルドでかっこいいんだけど、チキチキアーワッツゴーイオンほどのキャッチーなフレーズもなく、単に地味な曲だと当時思ってた。あの日の私にケリ入れた…。それでも圧倒的な固定人気で上半期敵無し状態ではあったけど、青山テルマのロングヒットに敗れて上半期2位3位に。その後には嵐が「One Love」を大ヒットさせて時代が変わり、年間では7位8位になった。
★★★★☆


8th White X'mas
08年12月3日
今回は静かなクリスマスバラード。確かに赤西がいると違和感のある曲だし、狙ってそういう方向性にしたのかも…?イントロから掴みにかかってくる静かに浸れるクリスマスさが好きな1曲。バラードでもかっこいいのがやっぱりKAT-TUN。KAT-TUNのシングルの中では一番じっくり味わえる曲である。SMAPみたいにAメロBメロでソロパートを歌い回す構成が良い。また「僕らの街で」以来にJOKERラップがないシングルになったが、アルバムVer.ではJOKERラップが追加された。なのでアルバムVer.が完成形っていうイメージが強い。売上としては初の実質1種(初回盤・通常盤の違いがカラオケの有無)だったからか初めて初動30万を割り込み、初めて年間トップ10圏外に。今までずっとトップ10にいたのも凄いが、絶えず安定しないメンバー構成、曲の方向性がファン離れに響いた…のかな…?
★★★★☆


9th ONE DROP
09年2月11日
亀梨主演のドラマ「神の雫」主題歌。金田一少年原作者によるワイン漫画ということで名前は知っている。ドラマ自体は「探偵学園Q」以来続いていた日テレ火9枠だったものの、あまりの不振にこれで打ち切りに…。そんなわけでドラマは残念ながらコケた以外の印象無いけど、曲は久々に疾走感溢れるこれぞKAT-TUN!なストレートロックナンバー。ただ以前よりも亀梨赤西の2強!ってよりも亀梨が徐々に1人存在感を発揮してきたような。ソロパートは相変わらずあるので単に曲の雰囲気か、主演が続いたからか。初めて聴いた当初は「うおお!名曲!!」と盛り上がってたものの、ストレートに突き抜けすぎて割とすぐに飽きてしまった。
★★★☆☆


10th RESCUE
09年3月11日
中丸主演のドラマ「RESCUE」主題歌。亀梨と同時期に中丸も連ドラ主演を果たしており、09年冬はKAT-TUNがドラマ主題歌を2曲手掛けるというハイペースなことになっていた。こっちはちゃんと観てて、レスキュー隊モノでけっこう熱さと緊迫感があって面白かった記憶が。そんなドラマにタイトルまで合わせてかなり気合いを入れまくったスリリングな楽曲。歴代シングル史上最高にヘビィなロックサウンドが鳴り響き、赤西のワイルドさも久々に炸裂し、JOKERラップと主演中丸のボイパが絶妙に絡み合う、「Real Face」以来にメンバーの個性が活かされたかっこいいシングル楽曲に。全シングルの中で1,2を争う好き。ただ、上半期これだけハイペースだったのに、09年嵐の怒涛の快進撃に場を譲ったのか、09年シングルまさかのこの2作だけだった。ていうかこの年はV6も15周年TOKIOもHey! Say! JUMPもリリース停滞気味で、やっぱりジャニーズ全体的に嵐押しだったな…。
★★★★★


11th Love Yourself ~君が嫌いな君が好き~
10年2月10日
亀梨主演のドラマ「ヤマトナデシコ七変化」主題歌。TBS連ドラ・少女漫画原作で上手くいけば「花より男子」の再来…!?と期待されたがそう上手くはいかなかった。KAT-TUNがツイてなかったのは用意されたドラマが悉くハズレだったことで…。今までとはかなり外してきてミステリアスなエレクトロ路線。留学を重ねた赤西の英語パートが炸裂(?)するように、赤西が好きな洋楽の要素を取り入れてきたんだろうか。この数ヶ月後にはK-POP大ブームが起こり、この手のエレクトロダンス路線はJ-POPシーンでも割と普通になったものの、当時としては声にエフェクトかけたり勝負曲にしてはチャレンジャーすぎる気がしたが、けっこう異色さが気に入ってハマった。当時世間は嵐「Troublemaker」一色だったけど、この曲も一緒に高校卒業~大学入学までの間に聞いた思い出の曲として残っている。
★★★★☆


この後のシングル「Going!」では再び赤西がいなくなって5人体制に。今度はロサンゼルスでライブ活動を行うとかでライブツアーも欠席し、7月には方向性の違いで赤西脱退が発表された。その後赤西はソロデビューし、12年には伝説のジャニーズ史上初できちゃった結婚をかましてジャニーズを退社。メディアからは殆ど姿を消したが、現在はコンスタントにアルバムを発表して海外中心の活動を行っているようなので、マイペースにやりたいことをやれていて良かったんだと思う。KAT-TUNはしばらく本格的に5人体制で再始動することになるが、その5人時代以降については次回に。