嵐 15周年シングルレビュー ~1999→2004~

15周年記念。99年に結成され、ミリオン直前の大ヒットという大々的なデビューを果たした嵐だったが、現在のポジションまでの道のりは平坦なものではなかった。最初こそサクラップという個性と10代若手のフレッシュさで押し切っていたもののSMAP、TOKIO、V6…という偉大なる大先輩方が全くトップをどかず、そうこうしている間にNEWSやKAT-TUNという更に若い後輩が頭角を現して続々デビュー。5人の個性やサクラップという特徴はそれこそSMAPの後継者になってもおかしくない存在感だったのだが、うまいこと売れずに解散説すら囁かれるなんとも言えない中間点ポジションに…という不遇の時代が続いていた。言わば飛ぶ鳥を落とす勢いで売れ始める前夜、初期5年のシングルをまず振り返ってみる。この時代、初期らしく色々な路線に挑戦していて並べて聴くとかなり面白かったり。櫻井による「サクラップ」嵐を一言で紹介する象徴的特徴だった。

 

1st A・RA・SHI
99年11月3日
言わずと知れたデビュー曲。初期V6もビックリのサビ以外ほとんどラップという当時としては異色の構成でインパクトを放った。まだ自分で作詞していないしかなりアイドルラップなので今ほどガツンとしていないものの、ここから今に至るまで櫻井翔のサクラッパーとしてのポジションは既に確立されていたと言える。V6のデビュー曲のユーロビートっぽさも当時斬新だったように、ラップ全面導入も当時最新鋭だったのかもしれない。当時小2だったのでなんか名前も曲も凄いのが出てきたというイメージしかなかったけど…。あとその先輩V6から始まり、のちにNEWS、Hey! Say! JUMP…と続いていくジャニーズ伝統のバレーボールタイアップでのデビューだったが、今ではMステのシースルー衣装の方が凄まじい勢いで浸透してる気がする。Mステでこの曲の話題になる度に毎回その話になり、2013年のスペシャルでは14年ぶりにその衣装で「A・RA・SHI」を歌っちゃったし。色々と伝説を産み出したデビュー曲だった。98万枚というミリオン寸前の売上は今でも破られておらず、O社の数字上では今でも最大ヒットシングル
★★★★☆


2nd SUNRISE日本/HORIZON
00年4月5日
早速40万枚まで売上を落とすが、実は「Love so sweet」が現れるまで歴代シングル2位の売上だった。

SUNRISE日本
サンラ~イズにっぽ~ん♪とサビで炸裂する勢い一発ソング。正直なところデビュー曲の二番煎じ…。やっぱり嵐という奇抜なネーミングといい当時はイロモノ扱いだったんだろうか。そして曲調が似ているのでこれもバレータイアップかと思いきや、フジテレビのプロ野球テーマソングだったりする。
★★★☆☆

HORIZON
ホライゾン!ホライゾン!正直A面のインパクトがあったとは思えず、この曲知ってても10周年ベストに入ってて「これA面だったの!?」って思ったリスナーは割といたんじゃなかろうか。これがA面だったら前作のC/W「明日に向かって」の方がもっと気合い入ってたんじゃ。いかにもデビューしたばっかり!な若さは溢れててフレッシュだけど。
★★☆☆☆


3rd 台風ジェネレーション -Typhoon Generation-
00年7月12日
日本語に訳すと「台風世代」。全く意味がわからないこれまたぶっ飛んだタイトルでリリースされた。これまでの流れに乗っかってまたネタソングか…と思いきや、なんとミディアムバラード。しかもセリフから始まる。シリアスなのか笑っていいのかわからない超空間へリスナーをいざッ、Nowが、2番からは転調して爽やかアップテンポに変化。総じて結局ネタソングではあるが、メロディー自体は切ない泣きメロ。学生の淡い恋を歌っているのも今までにないところ。しかし曲そのものが爽やかすぎて台風とは全く関係ないどころか真逆の空気。ネタなのかマジなのかわからない怪曲。怖いもの知らずというか、ぽん、とこういう曲が出てくる辺りジャニーズは凄いぜ…。
★★★☆☆


4th 感謝カンゲキ雨嵐
00年11月8日
二宮が出演したドラマ「涙をふいて」OPテーマ(主題歌はゆず「飛べない鳥」)ということで初めてドラマタイアップがついた。デビューから丸1年経ってファンへの感謝を歌ったポップバラード。デビュー曲以来にグループ名をタイトルに持ってきたのでこれもネタなのかマジなのか一見わからなかったけど、楽曲自体は大真面目。たった1年で感謝を歌うのは早すぎるんじゃないかとも思ったけどそんなことはどうでもいいぐらいに感動的。歌い出しのラップもかっこよく決まってるし、上手いこと王道と嵐の個性を混ぜてきた名曲である。またこの曲もブレイクした08年辺りから再評価され始め、震災時や10周年、紅白初トリなどの節目で何度もTVで歌われる代表曲ポジションに上り詰めた。名曲。
★★★★☆


5th 君のために僕がいる
01年4月18日
感謝を歌ってからは路線を変えたのかキワモノとしてもネタが尽きてきたのか、普通に爽やかポップスに。「頑張るさ!」と自分らやリスナー両方に語りかけるニュアンスで何度も歌う力強い応援歌。とはいえまだデビュー2年目、メンバーの大半もまだ10代だったのでまだまだ幼い雰囲気。ラップも欠かさず入れてくるもなんだか予定調和だし、嵐のシングルで一番なんでもなく普通な曲だと思う。
★★☆☆☆


6th 時代
01年8月1日
ドラマ「金田一少年の事件簿」主題歌。堂本剛に続いてマツジュンが2代目を演じることになり、原作が終了して1年後に再びドラマ化された。マツジュンのパッと見は金田一少年っぽいんだけど、美雪役の鈴木杏がガキすぎてちょっと…とかいうドラマへの感想は主にドラマ主題歌レビューに書いてるのでそちらをば。楽曲は初めてハードロックに挑戦。サクラップもかっこよく曲と融合して炸裂し、ハードに振りながらもサビはしっかりキャッチーに決めるなどバシッと今までと違う嵐をアピール。これまでのままアイドルポップを連発していたら間違いなく飽きられていただろうし、ここらガラッと作風を変えてきたのは今振り返ると一つの転機だったんじゃないかと思う。また、このシングルを持ってポニーキャニオンと決別。ジャニーズ専用レーベルのJ Stormを新設して移籍することになった。そのポニーキャニオン時代の全シングル&C/Wを収録したベスト盤もリリースされている。


7th a Day in Our Life
02年2月6日
ドラマ「木更津キャッツアイ」主題歌。櫻井翔が出演していたが主演はV6岡田。V6主演のドラマ主題歌を嵐が歌い、翌03年にはマツジュン主演のドラマ主題歌をV6が歌う(「キミはペット」の主題歌「Darling」)というトレード現象が起こった。ドラマはクドカン出世作として大ヒットし、2度も映画化。主題歌のこのシングルも売上は伸びたわけではなかったものの話題になり、年の途中からCD不況が加速して先輩ジャニーズがことごとく失速したこともあって02年ジャニーズNo.1ヒットになった。ヒップホップユニットのスケボーキングが提供したラッパーソング。どこがサビだかわからない曲調に絶えずサクラップが絡み、歌メロも同時進行…という、割と本格的にヒップホップした異色楽曲。当時のR&Bやラップブームは現在みたいな「歌謡メロにラップが入っている」ものではなく、けっこう所謂"ガチ"なのが多かったのでうまいこと時流に乗っかったヒットだったのかも。サクラッパーとして覚醒した櫻井はマジでかっこいいし、この曲は何度何年聴いても飽きない魅力がある。サクラップが歴代最高にフィーチャーされた曲として、嵐シングルを語る上で欠かせない作品
★★★★★


8th ナイスな心意気
02年4月17日
アニメ「こちら葛飾区亀有公園前派出所」OPテーマ。嵐が「こち亀」の主題歌という今聞くと夢の国民的コラボだが、嵐がそんなに有名じゃなかった時期にアニメにも出演してコラボプロモーションしていたらしい。何故か「アラシ」名義七三分けサラリーマン衣装という意味不明な趣向も打ち出された。しかしそんだけ奇抜にアピールしておきながら肝心の楽曲はなんでもないポップソング…。シングル初のサクラップも無しという当時としては肩透かし作品もいいところだったんじゃ…。アニメタイアップに合わせてわかりやすい曲を用意しようという意図もあったんだろうか。曲自体は気持ちいい安心安定のジャニーズポップなので割と好きなんだけど、別に嵐じゃなくても…と思ってしまう。ただ他のジャニーズがこの曲を歌う姿は案外想像できないし、「若者っぽい曲を歌える」というのも嵐の良さとして見られていたのかな?
★★☆☆☆


9th PIKA☆NCHI
02年10月17日
5人で主演した映画「PIKA☆NCHI」主題歌。当時はかなりの固定ファン人気だったのでそのまま内輪向けに公開されただけでそんなにヒットしなかったらしい。ファン以外は名前は知ってる…みたいな。前作のポップさはなんだったのかという勢いで、今度はミクスチャーロックに挑戦。「時代」の上位互換とも言えるハードロックで、サクラップに続いて二宮の趣味であるギターも初めてクローズアップ。今まで…というより、歴代シングルでも最も嵐のパーソナルな一面が繰り広げられた一曲になった。激しいラップがあるしハードな曲調ながら、サビはポップ…という多彩さが面白かった。若気の至りだったのか、国民的存在と化した現在、こういう冒険はもうやらないのかな…。
★★★★☆


10th とまどいながら
03年2月13日
櫻井主演のドラマ「よい子の味方」主題歌。初のしっとりミディアムバラード。2度目のサクラップ無し。「ナイスな心意気」に続いて、相変わらずガツンとした曲となんでもない曲の差が半端無い。あんまりドラマ主題歌っていう雰囲気でもないし…。O社でも当時破竹の勢いだったRUI「月のしずく」の5週目に敗れて初めて2位になるなど不遇な一作。この辺りからサクラップの有無が嵐のシングルの第一印象を決めるステータスになったような気がする。
★★☆☆☆


11th ハダシの未来/言葉より大切なもの
03年9月3日
大量OAされたCMソングとドラマ主題歌の両A面。久々にポップでガツンとした曲で攻めたからか、福山雅治「虹」の2週目に敗れてO社2位ながら20万枚を突破していつもよりヒットした。

ハダシの未来
コカコーラCMソング。サクラップは無いもののバンドロックテイストな爽快夏うたで、一発で耳に残るインパクト。明らかにヒットを狙いにきたことがわかる一曲。特にこの爽やかさが眩しい。メンバー全員がOVER 30's WORLD(30歳越え)した現在じゃこの輝きは真似できないだろうし、この曲ではデビュー4年目の若さが存分に放たれていた。若さって偉大だよね(?)
★★★★☆

言葉より大切なもの
二宮主演のドラマ「Stand up!!」主題歌。学園モノで当時新人だった山下智久、鈴木杏、成宮寛貴、小栗旬という今では超豪華メンバーがレギュラーを固めていたドラマだった…が、ドラマ自体は童貞卒業をテーマにしていたり、下着やセックスやらそういう単語が飛び交いまくるある意味壮絶な内容だったような…。たぶん現代では制作できないと思う。ていうか去年の月9で高校生役だった小栗旬、11年前のドラマでも高校生役かよ…。こちらも爽やか勢いたっぷりなアップテンポで、サクラップも炸裂。この曲から櫻井がラップ詞を自作するようになり、現在までのサクラップの基本形が確立された。「爽やかアップテンポ+自作のサクラップ」という嵐の王道教科書と言うべき代表曲
★★★★☆


12th PIKA☆☆NCHI DOUBLE
04年2月18日
5人で主演した映画「PIKA☆☆NCHI LIFE IS HARDだからHAPPY」主題歌。人気作だったらしく2年越しで続編が作られた。2014年には限定公開で更なる続編が作られ、主題歌に再び起用されている。青春たっぷりな切ない疾走ロックナンバー。今までに無く、何かが去ってしまうような切なさが押し出されていて、メロディーやフレーズのいちいちで涙腺を刺激されてしまう。大サビの前でソロパートを全員で歌い回しているのも5人の絆を感じるし、何よりメンバーが学生を卒業するぐらいの年齢だったのがより響いたのかも。5年目にして生まれた大名曲。…のだが、O社では嵐史上最低の売上なんでじゃあああああ!!!!!!
★★★★★


13th 瞳の中のGalaxy/Hero
04年8月18日
3度目の両A面。前作がコケたので焦ったのかジャニーズの新方針だったのか、通常盤と初回盤でC/Wが違うとかDVDの内容が違うとかいうジャニーズ商法をスタート。そんな影響もあってまた25万枚を超えるヒットに。

瞳の中のGalaxy
二宮主演のドラマ「南くんの恋人」主題歌。藤井フミヤが提供したバラード。藤井フミヤがセルフカバーすればそのまんまハマりまくるんだろうなと思うほど、ロマンティック溢れるバラード。「夜空ノムコウ」のキムタクみたいに二宮が真ん中でアコギ抱えて歌ってるのも印象的だった。嵐が大ブレイクした後に後追いで知ったけど、この曲はサクラップの有無関係無しにハマってリピートしまくっていた。世界観というか、引き込まれる魔力があった。
★★★★☆

Hero
日テレ系アテネオリンピックのテーマソング。この年「24時間テレビ」のパーソナリティーもやったので、この曲がテーマソングみたいにもなっていた。選手を称える系な王道の応援歌。万人ウケもしそうな普遍的なポップソングだし、何らかの機会で今この曲が再注目されてもおかしくなさそう。2曲ともサクラップは無かったけど、曲のパワーでそれを抑え込んだシングルだった。
★★★★☆

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