アルバムレビュー(改) 第0013回
奥華子
『恋手紙』

女性シンガーソングライター、奥華子の3rdオリジナルアルバム。収録シングルは「手紙」、C/Wの「空に光るクローバー」のみ。

No. タイトル
1 最終電車
2 しあわせの鏡
3 DROP
4 空に光るクローバー
5 透明傘
6 迷路
7 太陽の下で
8 三度目の冬
9
10 めぐり逢う世界
11 手紙
2008年7月15日発売 ポニーキャニオン 54分45秒 ★★★★★

シングル1枚でアルバムか…とふと思ってしまったが、実際には次のアルバムに向けてこの後シングルを2作年内に出している。08年は06年に続いてリリース活発な年だったらしい。

より音に厚みが増してキーボード主体のバンドポップス色が強くなった。これはキーボード一筋だった奥さんが売れ線に染まってしまった…というよりかは、純粋にキーボードの旨みを活かしつつ、よりポップスミュージシャンとして垢抜けていった現れだと思える。1曲目から後ろ向きすぎィ!なタイトルに見せかけて中身は「最終電車の時間まで彼氏と一緒で、またすぐに会えるけど離れるのは寂しい」という両想い一直線の「最終電車」に始まり、「しあわせの鏡」は奥華子ファンの間では結婚式定番ソングになりそうなキーボードストリングス・ウエディングソング。これが単にストリングスを派手にしているわけではなく幻想的な雰囲気を醸しだし、至福オーラを演出しているのが絶妙にイイ。しかし「DROP」はバンドポップス路線を攻めながら擦れ違っていなくなった「君」を振り返って嘆き続けるという失恋真っ盛りな楽曲という展開が炸裂。勿論幸せソングが2曲で終了するわけではなく、シリアスな失恋ソングも健在で、「私は一生かけてあなたを忘れます」と歌う「三度目の冬」はタイトル通りに凍り付くような重さが全開。また、人生葛藤系な「迷路」もCメロに進むにつれて引き込まれる。そして、哀しみや葛藤を描きながらも最後は希望に溢れた曲で終わる…というのが締まりが非常に良い。

どんどんとポップスシンガーソングライターとして垢抜けていき、引き込まれる曲が多いという見方では今までの2作には無かった魅力だった。バンドやストリングスとキーボードが融和したポップスに早くも着地したような。奥華子の名盤を挙げるなら間違いなく今作である。

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